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ニュース&ブログ

NEWS & BLOG
2025.03.19
校正者募集再開のお知らせ
お知らせ

 校正・校閲スタッフ(業務委託契約)の募集を再開いたしました。
 「校正スタッフ募集」ページの条件等をご確認のうえ、
 同ページ下部のフォームよりご応募ください。

 ご応募、心よりお待ちしております。

  株式会社 鷗来堂

2025.03.12
校閲(者)探訪・その1(後編)
校閲(者)探訪

前編からお読みください)

* * *

――具体的な書籍名をいろいろ挙げていただき、勉強になります。他に、調べものに役立つリソースなどあるでしょうか。

「身もふたもないと言えばそうなんですが、『人に訊くと早い』というのはありますね。
 近くに頼れる有識者がいればもちろんそれが財産ですが、個人的なヒューマンネットワークがなくても、図書館のレファレンスサービスは便利ですよ。直接の答えが出てこなくても、有用な資料の紹介をしてくれたり、ヒントが得られたりすることもあるので。ただ、どうしても人が対応するものなので、窓口によって若干のばらつきはありますが……。
 あとは、『この言葉の使い方はこれで正しいのか』という疑問に確証が得られなかったときに、国立国語研究所に問い合わせたこともありますね。問い合わせフォームや郵送・FAXでなので、多少時間はかかりますが、研究員の方が対応してくれるので、信頼度は高いです」

――そういう窓口もあるんですね。いわゆる生成AIの利用についてはどうですか?

「補助的に使うこともありますよ。当然、ゲラの内容を直接打ち込むわけにはいきませんが。
 以前、ある外国の労働統計の調べがつかなくて困っていたとき、試しに生成AIに訊ねてみたら、『これだ!』という資料のURLを一発で出してくれて、感動しました。
 国連などの国際機関のWebサイトなどはかなり有益なんですが、ページ階層が複雑だったりして、英語が不得手だと目的の情報になかなか辿りつけないので、AIにそういったところをサポートしてもらえると助かりますね」

――話題が変わりますが、調べものにまつわる、印象的なエピソードなどありますか?

「そうですね……。以前、とある歴史上の人物を主題にした連載小説を担当していたのですが、作業を分担する同僚と話していて、『主人公が亡くなるところまで描くとしたら、その日は雨にするのかな』といった話になって。そこから、実際のその日の天気はどうだったのだろうか?と興味を持ちました。
 そもそも調べがつくともあまり思っていなかったのですが、試しにいろいろ資料を見ていて、『古記録による○○世紀の天候記録』(東京堂出版)というシリーズの存在を知りました。各天候記事の出典も記載されていて、おもしろい本でしたね。それによると、主人公の没した日は『晴れ』だったようです」

――作中に「雨」の描写が出てきたから事実確認を、とかではなく、個人的な興味でそこまで調べたんですか?

「はい。作中では『風の強い日だった』といった描写だったので、特に調べた資料で指摘を出すことはありませんでしたが、いい経験でした」

――これがベテラン校閲者の心構えか、と感服するばかりです……。それでも、やはり校閲していて後悔や反省をすることもありますか。

「それはもちろん。私の知り合いのベテラン校閲者の方も言っていたことですが、やはり『完璧な校正』は経験を重ねてもなかなかできないですね。むしろ経験を重ねれば重ねるほど、疑問や不安は増す。ゲラを戻した後に、あれで合っていたのだろうか、もっとうまい形でやれたのではないか、と悩むことはしょっちゅうです。
 案件と対峙していても、たとえば納期が長くはない中で『17世紀ドイツで開催された、ある議会の日付』などが出てきて、どう調べたものか途方に暮れてしまうこともある。
 それでも可能な限り、全力を尽くして取り組みます。これは、そうあるべきという使命感というか……今までなんとかやってきたし、これからもしっかりやっていきたい、という気持ちですかね」

――いろいろお話しいただき、ありがとうございます。最後に、若手の校閲者たちにアドバイスというか、メッセージをいただければ嬉しいです。

「調べものということで言えば、『レファレンス資料の質と量が校閲の質を左右する』ということを経験的に感じています。今はインターネットの時代だというのは承知していますが、それでもやはり、頼れる書籍を手元に置く習慣はつけたほうがいいと思います。
 国語辞典を最低でも数冊、漢和辞典、外国語辞典などはもちろん、『アトラス』シリーズ(平凡社)のような地図を日本・世界で各1冊、年表も同じく日本・世界1冊ずつはあるといいですね。それらに加えて、できれば興味や関心のあるその他の専門事典もほしいところです。少しずつでもいいので、理化学系も含めて揃えていくといいかと。
 暇な時間があれば、図書館に行って知らないジャンルの棚を探索するというのも、対応の幅を広げてスキルを育てることにつながります。
 調べる手段があると、校閲はもっとおもしろくなるんですよ。そのためにも、普段から好奇心をもってアンテナを張り、得意な分野もそうでない分野も、知識を深めていってほしいですね」

2025.03.05
校閲(者)探訪・その1(前編)
校閲(者)探訪

『東京人』書影

 『東京人』2025年2月号の特集「辞書と遊ぶ!」にて、弊社校閲部員のインタビューが掲載されました(p76~81、「鷗来堂ベテラン校閲者に聞く」)。
 充実した記事に仕上げていただきましたが、6ページには残念ながら収まらなかったこぼれ話もまだまだあるはず。
 ということで、『東京人』の取材に応じた校閲者に、社内で追加インタビューを行いました。たっぷりのボリュームになったため、2回に分けてお送りします。
 ぜひ『東京人』記事とあわせてお楽しみください!
(※単体でもお読みいただけます)

* * *

話し手:匿名校閲者(2007年鷗来堂校閲部入社、校閲歴20年以上)
聞き手&文:鶴(2014年鷗来堂校閲部入社、現在は校閲を離れ管理本部所属)



――『東京人』で、辞書・事典類などの資料書籍を370冊ほどもお持ちというお話がありました。そういった「手元に置いておきたい資料」とはどこで出会うのでしょうか?

「私も、最初はここまで買うつもりはなかったのですが……。でも、都度図書館に通ったりしていろいろと調べていると、『やっぱり手元にあったほうが便利かな』となるんですよね。版元や編者によってそれぞれ『色』が違うので、何種類もあるほうが比較検討できますし。
 資料との出会いは、そうですね。実際に図書館で見てみて使いやすかったものを購入することもありますし、利用した事典類や資料本の『参考文献』に記載されていて、そこから興味を持って入手したものも多いです。たとえば『ジャパンナレッジ』でも引ける『国史大辞典』(吉川弘文館)は、各記事中に参考文献が明記されていますが、あれは確かな著者の方が信頼している資料ということで、かなり頼りにしています。
 書店や古書店の定点観測もしています。神保町の古書店は棚の入れ替わりが早いところが多く、思わぬ出物に会えることがあります。ただ、事典類は高いものも多いので、出会ったときには買えず、後日割引価格で買えるイベントで見つけてようやく手に入れられた、ということもありました」

――かなり「足を使って」いるんですね。

「はい、『足を使う』のはとても重要なことだと思います。
 といっても、紙の本だけにこだわる必要はないですよ。WebにはWebの良さがありますし、電子だと、macOS・iOS限定ですが『物書堂』の辞書アプリは種類も多く、横断検索ができるので非常に便利ですよね。
 結局、どちらか一方ではなく、両方を柔軟に使い分けるというか、『両方見る』のが一番だと思います」

――自分の足で調べに行く、といえば、図書館通いの話は『東京人』でもされていましたね。やっぱり国立国会図書館が便利ですか?

「国会図書館は、慣れるととても調べ甲斐があるんですよ。蔵書が豊富なのはもちろん、『ジャパンナレッジ』や有料データベースサイトも無料で自由に閲覧できますし、『国立国会図書館デジタルコレクション』にも、国会図書館内でないと見られない資料があります」

――まとまった調べだと、手元のインターネットより国会図書館に行ったほうが「コスパがいい」んですね。

「ただ、国会図書館では難しいことというのもあります。蔵書の大半が閉架なので、『近くの棚にある同分野の本を手に取る』といった広げ方をしづらい、とかですね。また、学校の教科書類はあまり置いていないので、教科書からの引用を調べる仕事では、専門図書館である『教科書図書館』に行ったりもしました。
 あと、著作権管理がしっかりしている図書館では、地図やCDの歌詞カードなどを見ることはできても、著作権の制約上、すべてをコピーできないんですよね。『地図の複写は見開きの場合は半分までです』と言われると、わかるんだけれど指摘につける資料としては不完全になってしまう。『東京人』では海外の地図についても触れましたが、資料を手元に置きたいのはそういった理由もあります」

――ふむふむ。手元に置いておきたい資料として、『東京人』に載りきらなかったおすすめなどはありますか?

『近代日中関係史年表』『現代日中関係史年表』(いずれも岩波書店)、『現代日本経済史年表 1868~2015年』(日本経済評論社)、『日本宗教史年表』(河出書房新社)のような専門分野の年表類はネットではなかなか見つけにくく、とても役に立つので、叶うなら全分野揃えておきたいところですね。『岩波書店百年』(岩波書店)なんかも、出版界の出来事が併載されているので、業界年表として使えます。『日本金融年表』(日本銀行金融研究所)は、一部Webでも見ることができますよ。
 そうそう、アジア系の年表だと、多くのものは推古天皇の頃からしか記載がないのですが、『東方年表』(平楽寺書店)は神武天皇時代から載っており、『ありそうでなかなかない』資料です。
 『日本史必携』『近代史必携』(いずれも吉川弘文館)や『近現代日本経済史要覧 補訂版』(東京大学出版会)もデータとして一覧性の高い資料が満載ですし、『西洋古典学事典』(京都大学学術出版会)は、古代ギリシア・ローマ時代の専門事典としては好個の一冊です。人名の表記では英語はもちろん、フランス語、ドイツ語、イタリア語なども加え、一部に系図も添えられていてとても頼もしいですね」

――怒涛のように出てくる……!

「『調べ方』そのものの参考書籍でいうと、『日本史を学ぶための図書館活用術』(吉川弘文館)は、著者が元国会図書館司書の方だけあり、有用な資料が多く載っています。『プロ司書の検索術』(日外アソシエーツ)も、キーワードの見つけ方の指南もあって、合理的な検索のしかたが学べていいですね。
 辞書の年鑑のようなものもあるのですが、情報がごちゃごちゃしていて思ったより使いづらいので、この手の書籍で調べ方のエッセンスを身につけるのがいいと思います」


後編につづく)

2025.02.27
社員募集のお知らせ
お知らせ

 鷗来堂では、現在社員の募集を行っています。

  <募集職種>
  ・営業部 進行管理スタッフ

 詳しい内容は、下記ページをご覧ください。
 →https://hello-work.info/job/1308010665751/
 (※外部ホームページに移動します)

 ご興味のある方は、募集要項をご確認のうえ
 履歴書・職務経歴書をお送りください。

 皆様のご応募を心よりお待ちしております。

  株式会社 鷗来堂

2025.02.26
誤りの陰に潜む誤り
社員ブログ

 私たち校正者が読んだゲラは、社内での検品を経てからお客さまのもとへ届けられます。
 検品担当者によって発見された改善点は、社内で共有されます。起こりやすいミスなどを蓄積して社員全員の今後の仕事に活かしていくための仕組みです。
 この「フィードバック共有」は校正担当者の名前を伏せておこなわれるのですが、校正者本人は自分の作業に不備があったともちろんわかるわけです。
 「フィードバック共有」の通知がPCに表示されるたびに心拍数が上がり、「どうか私のゲラではありませんように……」とビクビクしながら震える手で通知をクリックします。
 願いが通じて自分の読んだゲラではなさそうだとわかったときには、まず安心して、それからやっと「これは確かに見落としてしまいそう」とか「こういうところは要注意なんだな」と内容を確認していきます。

 このところ続いたのが「指摘を出した箇所のすぐ近くの誤字に指摘が出されていなかった」パターンです。たとえば「プルドーザ―」に対して「プをブにしますか?」という鉛筆は入っていたが「―(ダーシ)」を「ー(オンビキ)」にする指摘はなかった、というような感じです(この例は私が説明のために今考えたもので、実際にはありません)。
 一つ見つけると安心しちゃいがちなんですよね。

 小学5年生のときに、教室で担任のI先生がテストの丸付けをしていました。シャッシャッと軽快に走らせていた赤ペンをピタッと止めて「100点かぁ……」とちょっと残念そうに呟くI先生。
 周りを取り囲んでいた私たちの誰かが「100点だとダメなの?」と訊くと、「100点だと間違いを見落としているかもしれないからね、もう一回はじめから見るようにしているんだよ」と言って解答欄を一つ一つ指差し確認し、「やっぱり100点だ」と採点済みの山に載せました。
 次の答案を手に取りパパッと手早く丸付けすると「これは97点、だから見直ししなくて大丈夫」とニッコリ。
 あのときの97点、もしかしたら94点だったかもしれない。
 正答のあるテストの丸付けと、私たちがおこなう正答のない校正はまったく別のものではありますが、自分の出した鉛筆のすぐそばに見落としが隠れているのではないかと目を光らせるとき、I先生の顔を思い出すのです。

* * *

<書いたひと:ま>
 2009年入社。校閲部所属。
 二児の親です。(当時はクラスの他の子に点数がわかってしまう環境で丸付けをしていたんですね。今ならありえないのではないでしょうか)

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